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お知らせ

【企業訪問】社員とともに「幸せづくり」の実現を目指して

㈱ダンケ 代表取締役社長 浅野裕幸氏(山形支部会員)

 

㈱ダンケは「幸せづくり」を事業定義として、山形市で不動産賃貸業および小規模多機能型居宅介護事業所、サービス付き高齢者向け住宅の介護事業、高齢者向け住宅紹介業(居住支援法人)を営んでいます。介護業界では慢性的な人手不足状態にありますが、同社も例外ではなく求人票を出しても応募がないという厳しい状況が続いていました。同社浅野社長は、コロナ禍を好機と捉え、外国人人材の採用を加速度的に進めました。

 

 

人材不足の活路を外国人材の採用に見出して

外国人の労働力を自社に生かせないかと検討を始めたのは2014年のことでした。求人票を出してもなかなか採用につながらない、紹介や派遣で紹介料を払い採用しても短期間でやめてしまい定着しないなど採用の課題は山積していました。県内の少子高齢化も進み、介護施設のニーズはますます高まっており、いかに人材を確保し、育てていくかは急務でした。採用と育成の課題解決のため外国人材の受け入れを検討しましたが、資金面や面接に伴う渡航、登録支援機関の模索がハードルとなり、すぐに舵を切ることができませんでした。浅野氏は、今後必ず外国人の労働力は必要になると、然るべき時に備えて情報収集を始めました。

特定技能や技能実習の違いを知ることから始め、数多の支援機関と面談し、費用面はもちろんのこと、受入体制や教育体制について比較検討を繰り返し行いました。2019年、浅野氏は現地で無償教育し、日本に送り出している支援機関と出会い、自社に外国人材を迎え入れることを決断しました。2020年に入り新型コロナウイルス感染症が猛威を振るう中、介護施設は介護崩壊の危機と常に隣り合わせでしたが、オンラインツールの普及により面接をオンラインでできるようになりました。面接のための渡航が不要になることは、外国人材採用を進めるにあたり大きな追い風となりました。

 

 

学習会で受け入れ風土を醸成

面接は画面越しに、浅野氏だけではなく現場で働く社員も同席して行い、2021年11月にミャンマーからの特定技能外国人2名の採用が決まりました。特定技能外国人は、5年間の勤務の中で介護福祉士の資格取得を目指しています。

一部の社員からは初となる外国人材の受け入れに対し、「物がなくなるのではないか」「ロッカーに鍵をつけてほしい」とネガティブな意見も出されました。浅野氏は採用が決まってすぐに、社内の体制づくりのため勉強会を始めました。

業務の合間を縫って2名ずつ、50名の社員に対し、県内の介護業界の現状と未来を示し、なぜ外国人材が必要なのか、日本に働きに来ようとしているのはどのような人なのか、今採用することで自分たちの働き方がどのように変わるのか懇切丁寧に説明を行いました。本当に人材確保が難しくなってからでは、自分たちの業務負担が増えてしまうことが懸念材料としてあることも伝えました。

また、外国人材のネガティブな行動の背景には、契約と違う状況下で働かせるなど、会社と経営者側に非があることを説明し、一緒に学び、成長しながら働いていこうと「共育ち」と「協力」を呼びかけました。

全社員への説明に2か月を要しました。勉強会を繰り返す中で、社内の意識が高まり、否定的な意見は出されなくなりました。新型コロナウイルスによる渡航制限やミャンマー国内での内戦の影響も受け、当初の予定よりも遅れて2022年8月から一緒に働くことになりましたが、社員からは「早く来てほしい」「いつごろからか」という声が聞こえるように変化していました。

ミャンマー人スタッフが来県後、浅野氏は町内会や交番などに一緒に赴き、地域の方々とお互いに知り合う機会を設け、双方の安心感づくりにも注力しました。浅野氏は「会社の中で意識を共有するためには種まきが何より重要だ。社員を巻き込むことで一体感が生まれる。そして地域ぐるみで受け入れ態勢をつくることも欠かせない」と語ります。

 

 

やさしさの連鎖と社員の変化

ミャンマー人のスタッフが一緒に働くようになり、既存社員の働く姿勢にも変化が出てきています。ミャンマー人スタッフが常に利用者の目線に合わせて腰を低く対応する姿を見ては、自身の対応に生かすなど、お互いがお互いのよいところを学び、実践しあう姿も見られるようになりました。またあまり自己表現をしない若手社員にも自ら進んで取組む主体性が見られるようになってきました。文化の違いややり方の違いなど、齟齬が生じることもありますが、外国人材の採用に当たって働く仲間を選んだのは自分だという想いが、共に成長していこうという想いの原点となり、やさしさの連鎖が生まれ、共に働きやすい職場づくりにつながっています。

特定技能外国人は5年間をかけ、介護福祉士の資格を取得した後は、資格を生かし他の職場でも働くことができるようになります。浅野氏は、5年後を見通し、「いかに幸せになってもらうか。ここに来てよかったと思ってほしい。5年後も選んでもらえる会社でありたい」と前向きに語りました。

㈱ダンケでは、来年にも新たな特定技能外国人を受け入れる計画があります。浅野氏は利用者様とそのご家族はもちろんのこと、地域社会とすべての社員の「幸せづくり」の実現を目指し邁進し続けます。

023-615-8302